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2011年11月23日

カクマクシャカ「IMAGE NOTHING」

2011年11月16日にカクマクシャカ待望の全国リリース作品『IMAGE NOTHING』が発売!
とても素敵な作品だったので、カクマクシャカの紹介を兼ねて、これまでを振り返りながらレビューを書いてみたいと思います。

沖縄インディーズの黎明期に活躍したハードコアパンクバンド「武士道魂」のフロントマンとして活躍していた安村を中心として結成された「角膜釈迦」。この頃、出会ったことはないので分らないのですがノイズ系などをやっていたようです。その後、現在のソロユニット形になり(表記もカタカナのカクマクシャカに)、ラップを始める。その契機となった曲が2004年に沖縄国際大学米軍ヘリ墜落事件をテーマに盟友・DUTY FREE SHOPP.の知花竜海とともに制作した「民のドミノ」(←FREE DLリンクに飛びます)。楽曲を収録したCD-R500枚の無料配布とフリーダウンロードを開始して、そのメッセージ性とともに話題になりました。

当時、僕は大学4年生で卒業論文で現代沖縄音楽についてミュージシャンの方への聴き取り調査を行っていて、安村さんと竜海さんに出会ったのはちょうどこの頃。今でもお二人は僕に大きな刺激を与え続ける存在です。このBLOGを始めたのも竜海さんのススメがあってです(全然、更新出来てないですが。汗)

「民のドミノ」は初ラップ作品とは思えないくらい衝撃的な楽曲だった。カクマクシャカのベースというか魅力の部分は現在と全く変わらないが、この楽曲と『IMAGE NOTHING』の作品群を比べるとラップが初期衝動的で字詰め感が凄い!そして並行してDUTY FREE SHOPP.と制作してきたアルバム『音アシャギ』をリリース。DUTY FREE SHOPP.のアルバム『カーミヌクー』の進化系とも言うべき作品でジャンルレスに次代を担う沖縄の若手ミュージシャン達が次々と出てくる。当時の沖縄インディーズ・シーンの興隆が感じ取れて、今でも必聴の一枚です。そして、当時リアルタイムで聴いて感じたことは「沖縄でもこんな音楽が作れるんだ!」という衝撃!2人のパブリック・イメージというとどうしても社会的メッセージ性が先に挙がってしまうけど、2人のサウンドプロデュース力に圧巻の一枚です。竜海さんがリリース時にラジオで「まずは音楽でカッコいいと思ってもらえて、メッセージは後から気付いてくれれば良い」と話していたのも印象的。

「民のドミノ」のテーマの現場となった沖縄国際大学でのパフォーマンス
このときのパフォーマンスは本当に鳥肌が立つほどだった!


『音アシャギ』収録曲から
south天加那志 feat.AWICH、平良美咲


「image nothing」をプロデュースした耳切坊主のK2Yさんがヴォーカル参加している一曲。
abirojiのyagiさんのデス声も加わった異種格闘技感にも注目。
音アシャギ feat.yagi[abiroji]、K2Y[耳切坊主]、NA-GA the Dragon[G.A.C.]


バングラビートのウチナー(沖縄)版!?
三線の倍速ミックスとかが面白い一曲。
太陽ぬ島 feat.TSK&KSK、KZ[G.A.C.]、比嘉光龍


この辺りまでがカクマクシャカの第一期といったところでしょうか。

そして全国的に名が知られるようになったのが2006年に発表されたShing02との合作「無知の知/僕と核」(←FREE DLリンクに飛びます)。4人のMCが加わった「無知の知 ・6MCs REVAMP」も公開されるなど、現在でも拡散し続ける代表曲です。カクマクシャカのメッセージも深化していって、アーティストを魅了するアーティストといったような趣が出てきたのも、この頃からじゃないかな。特に加藤登紀子にフューチャーされフジロックフェスティバル06に出演したのは大きいでしょう(2009年のPeace Music Festa!でも再び共演)。

無知の知 / Muchi No Chi - 6MCs Revamp


そして2007年にドロップされた待望のソロアルバムが『シャカの掌の惑星』。「無知の知」とは対照的にカクマクシャカの歴史の中でも飛び抜けてポップな作品!「ANETTAI」や「じゃあ、またね。」など今聴き返せば、かなり実験的かも。「街の詩」とかは、現在に続くカクマクシャカの魅力の一つである詩的世界観の深化を垣間見ることが出来る楽曲。今では貴重かもしれないライブ会場限定で発売していたライブ音源CD-R『言葉ヨ止マレ2009』に収録されている「島よ」「深海魚」「消えない炎」なんかもそんなカクマクシャカの詩的世界観を堪能できる楽曲だと思います。これら楽曲は正規リリースされてないので、なかなか聴けないかも知れませんがライブではかなりやってきた曲なので、ライブに遊びに来ると聴けるかもしれません。

メッセージの深化とともに、この時期の特徴として人との繋がりを通して「場」というものに対して、かなり意識的に活動していた時期と言えるんじゃないかと思えます。むしろ、それが内省的なメッセージ性としてフィードバックされていたかも。2008年からカクマクシャカが主宰して始まった「琉球オルタネイト」は一年ちょっと続いた定期開催のイベント。僕もスタッフとして関わっていましたが、ジャンルを越えてアーティストや観客が繋がっていく本当に素敵なイベントでした。例えば、観客として来ていた人が次の開催時にはステージに立っていたりというような感じです。

この時期のryuQのインタビューとか面白いですよ。
「琉球オルタネイト(仕掛け人・カクマクシャカ)」
http://ryuqspecial.ti-da.net/e2473559.html

そして、少し時を経て、第3期とも言える時代が現在じゃないかと思います。

砂の星/TAISEI feat.カクマクシャカ


ここ数年、トラックメイカーTAISEIとの「砂の星」、MC SODAとの「腐海」など国内外のミュージシャンの作品に客演で多数参加。客演集だけで余裕で一枚アルバムが出来るんじゃないかというくらい。そして、この一年ほど顕著なのがFragmentや空也MCなどの「術の穴」や、ParanelやELOQなどの「LOW HIGE WHO?」の優良レーベルとの接近。

ヒップホップ・シーンに精通していない門外漢の僕が紹介するのも恐縮ですが、どちらもDIYでクリエイティブなアーティスト達が集う全国的に注目されているレーベルです。どちらもいろんなジャンル、いろんなタイプの個性的なアーティストが集うレーベルで、特にヒップホップ・シーンにおいて注目されている所です。ここ数年のヒップホップにおけるITの活用は面白くて(ヒップホップに限らず、エレクトロなど打ち込み音楽全般に言えることだと思いますが)、フリーダウンロードによる楽曲配信や、SNSを活かして楽曲のやり取りを行って作品を発表したり、本当にワクワクするようなことが繰り広げられています。両レーベルはそういうことに対して意識的だったと言えると思います。LOW HIGH WHO?のアーティスト達もそれぞれ出身もバラバラでネットで繋がっていたようだし。

両レーベルとの接近によってカクマクシャカも日本のヒップホップ・シーンという文脈で新たに捉え直されるようになった。興味深いのは客演量も増え、自己プロデュースで完結するところからトラックメイカーやラッパーなどに委ねることで詩的表現のみを深めたり、表現全般が自由になった気がします。そして、満を持して術の穴レーベルから待望のソロ作品をリリース!

と、本題の『IMAGE NOTHING』のレビューに入る前にこんなに時間を費やしてしまったのは、今回の作品を一聴したときに、今までの全てがプレイバックされるように感動してしまったから。カクマクシャカのバイオグラフィから、どっか削除してしまったら、きっとこんな作品にはならなかったと思う。過去の全てがあったからこその現在のこの作品だと!この一枚にカクマクシャカのポップなセンスも、内省的な部分も、詩的世界観も、シリアスな部分も、社会的メッセージも、いろんな側面が表れていて、とっても面白いと思います(ちょっと大袈裟かな?)。

1曲目の「image nothing」はともに沖縄インディーズ・シーンの黎明期を歩いてきたK2Yのプロデュース作。カクマクシャカの詩的世界観とK2Yのメロディセンスとのマッチングがとっても気持ち良い曲。


2曲目の「或る神の死」はMC SODAとHisomi-TNPとのそれぞれの個性が光りながら問題意識の共有で一つに繋がる曲。それぞれの過去の競演作「腐海」と「無知の知」を思い出さずにはいられない。

3曲目の「私は総ての声になろう」はTAISEIの作る繊細なトラックと囁くようなラップが癖になる一曲。

4曲目の「623」は同じウチナーンチュ(沖縄人)として深い共感を抱く曲。Fragmentのトラックのせいもあってか、熱いメッセージでありながら、詩がとても繊細で凄いバランスの上で存在している曲だと思う。個人的には今までのカクマクシャカの曲の中で一番好き!フックで唄う「誰も憎まない 笑い飛ばせ 生きてさえいれば明日がくる」の落としどころがカクマクシャカらしくて素敵!

5曲目「GUN!」と6曲目「Rap Rap Rap」はNOBB-Dのトラック。地元・沖縄出身のアーティストのトラックがこうしたアルバムの中にしっかり入るところが嬉しい。ともにクラブでのショーケースで映えそうな曲。「Rap Rap Rap」は一度ライブで聴いたことがあるけど、フロアがとっても良い雰囲気になった!

と、こんな感じでダラダラとまとまりもなく長文になってしまって申し訳ないです。
『IMAGE NOTHING』まだ耳にしてない人はぜひ一聴して下さい♪
カクマクシャカの魅力が詰まった一枚になっています。



本当にこの作品に出会えたことに感謝です。
この歴史、この繋がりが、次のフェーズではどんな未来を魅せてくれるのか今から楽しみです。